金融政策ルールと中央銀行の政策運営
2005年 8月31日
企画局
小田信之
永幡 崇
日本銀行から
日銀レビュー・シリーズは、最近の金融経済の話題を、金融経済に関心を有する幅広い読者層を対象として、平易かつ簡潔に解説するものです。ただし、レポートで示された意見や解釈に当たる部分は、執筆者に属し、必ずしも日本銀行の見解を示すものではありません。
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以下には、(要旨)を掲載しています。全文は、こちら (rev05j13.pdf 64KB) から入手できます。
要旨
金融政策ルールとは、物価や経済活動の安定を目的として、マクロ経済の変動に応じてシステマティックに金融政策を運営する方式を表現したものである。表現の形態には様々なバリエーションがあり得る。例えばテイラー・ルールの場合、足許のインフレ率や実体経済の強さが望ましい水準からどの程度乖離しているかに応じて、政策金利を景気中立的な水準からどの程度高くしたり低くしたりするかを示す。
金融政策ルールの用途としては、実際の金融政策を近似的に表現することや、望ましい金融政策のパターンを分析することなどが挙げられる。金融政策が適切なパターンに従ってシステマティックに運営されれば、民間経済主体は、将来的にも経済変動に応じて金融政策が効果的に発動されることを見込んで経済活動を営むようになるため、経済が安定しやすくなるというメリットが生まれる。このため、経済構造に応じてどのような金融政策ルールを考えるのが効果的かについて、様々な研究が行われてきている。
ただし、現実の経済構造は単純でないため、中央銀行は特定の金融政策ルールに機械的に従えば良いというわけではない。実際の金融政策は、システマティックな政策運営を基本として上記のメリットを享受しつつ、予期せぬ事態にも適切に対応可能な機動性を確保しておくことが重要であろう。