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近年のIT業界における在庫の特徴とその背景

需要構造の変化とメーカーの在庫管理の取り組み

2007年7月17日
調査統計局
齋藤克仁 明知聖士

要旨

わが国のIT業界の在庫動向について、やや長い目でみると、(1)中期的な在庫変動が小幅化するとともに、在庫率は趨勢的に低下している、(2)在庫率の低下は、主として完成品メーカーによるものであり、部品メーカーの在庫削減テンポは緩やかなものにとどまっている、(3)生産・在庫のサイクルが年末商戦やオリンピックなどに影響されやすくなっている、といった特徴がみられる。こうした特徴には、需要面での構造変化と企業の在庫管理への取り組みの双方が影響している。すなわち、需要面では、IT関連の最終製品の多様化などが、IT製品全体の変動を均す方向に作用しているほか、サイクルの変化をもたらしている。一方、在庫管理面では、完成品メーカーを中心とする、(1)サプライチェーン全体の情報管理、(2)ジャストインタイム方式の導入などによる部品在庫の圧縮、(3)セル生産方式の導入などによる生産リードタイムの短縮、などが在庫の大きな変動を回避する要因となっている。その反面、部品メーカーでは、完成品メーカーからの在庫振り代わりもあって在庫管理負担は軽減しておらず、引き続き潜在的な在庫調整リスクを抱えている。また、新興国の趨勢的な需要拡大は、先進国での需要減少の影響を緩和する効果がある一方、需要予測の困難化を通じ、潜在的な在庫調整の要因となる可能性もある。

日本銀行から

日銀レビュー・シリーズは、最近の金融経済の話題を、金融経済に関心を有する幅広い読者層を対象として、平易かつ簡潔に解説するものです。
ただし、レポートで示された意見や解釈に当たる部分は、執筆者に属し、必ずしも日本銀行の見解を示すものではありません。

内容に関するご質問は、日本銀行調査統計局 峯岸誠(E-mail:makoto.minegishi@boj.or.jp)までお寄せ下さい。