このページの本文へ移動

景気循環要因を取り除いた生産性の計測

2000年以降の上昇とその背景、分配面への影響

2008年4月17日
調査統計局
川本卓司 笛木琢治

要旨

本稿では、わが国経済について、景気循環的な要素を取り除いた全要素生産性の成長率(以下では、これを「技術進歩率」と呼ぶ)の計測を試み、以下のような分析結果が得られた。(1)わが国経済全体の技術進歩率は、2000年以降、緩やかながら加速している。(2)こうした技術進歩率の加速には、近年の情報技術(IT)革新の進展が少なからず影響しており、産業・部門別にみると、電気機械を中心とした「IT製造部門」の寄与が大きいが、「IT利用部門」でもプラス方向に寄与している。(3)非製造業の生産性の計測を巡っては、データの信頼性など様々な留意すべき点があるが、非製造業の技術進歩率は、全体として製造業に比べ低い伸びにとどまっている中で、規制緩和とIT利活用が比較的進んだ卸小売業では技術進歩率が上昇している、という特徴がみられる。(4)技術進歩を分配面からみると、全体の牽引役である「IT製造部門」の中心にある電気機械では、果実の大部分が、価格下落という形で内外の購買者に分配されており、必ずしも自産業の収益や賃金の増加に繋がっていない。

日本銀行から

日銀レビュー・シリーズは、最近の金融経済の話題を、金融経済に関心を有する幅広い読者層を対象として、平易かつ簡潔に解説するものです。
ただし、レポートで示された意見や解釈に当たる部分は、執筆者に属し、必ずしも日本銀行の見解を示すものではありません。

内容に関するご質問は、日本銀行調査統計局 飯島浩太(E-mail:kouta.iijima@boj.or.jp)までお寄せ下さい。