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素材産業再生の背景と今後の課題

鉄鋼・化学業界の比較分析

2008年8月11日
調査統計局
伊藤 智

要旨

わが国素材産業は、二度の石油危機や円高、バブル崩壊を経て、内需の成熟化や需要産業(自動車・電気機械等)の海外移転により長期低迷を経験し、「構造不況業種」と呼ばれるに至ったが、2002年からの景気回復局面では目覚しい復活を遂げた。この背景としては、(1)新興国・資源国が牽引するかたちで海外需要が拡大したことに加え、(2)合理化や生産性改善といった企業の自助努力が奏効したことも挙げられる。鉄鋼・化学業界の再生過程を比較してみると、鉄鋼業界の方がここ数年では活況を呈してきた姿が窺われる。これは、鉄鋼業界の方が、(1)産業構造の違いもあって、海外需要拡大を取り込むことに成功したほか、(2)不況期においてより厳しい経営環境に直面した結果、設備・雇用・負債の「3つの過剰」についても一段と踏み込んだ調整を実施したため、と考えられる。このようにわが国素材産業は復活を遂げてきたとはいえ、今後を展望すると、資源高に対応しながら国際的な競争力も高めていくという、容易ならざる課題に直面している。この点に関しては、わが国企業の場合、海外メーカーに比して生産規模や自前での資源調達の面で見劣りする一方で、技術力や生産効率などでは高い競争力を維持しているという特徴がある。このため、資源価格が高騰している中での資源の安定的な確保に関する戦略的対応を推進すると同時に、高付加価値製品の供給や高効率・省コスト生産というわが国素材産業の比較優位を最大限活かすことによって成長性の高い海外需要を確保していくことが、長期的な発展の鍵であると考えられる。

日本銀行から

日銀レビュー・シリーズは、最近の金融経済の話題を、金融経済に関心を有する幅広い読者層を対象として、平易かつ簡潔に解説するものです。
ただし、レポートで示された意見や解釈に当たる部分は、執筆者に属し、必ずしも日本銀行の見解を示すものではありません。

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