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日本の生産変動

:グローバル金融ショックと世界経済の構造変化

2010年5月25日
調査統計局
遠藤峻介 平形尚久

要旨

本稿では、グローバルな金融ショックや新興国の台頭に伴う世界経済の構造変化が、日本の輸出・生産に与える影響について分析した。具体的には、仕向け先別・品目別の輸出や日本、米国、欧州、新興国の生産を時系列分析し、国際間の波及構造の変化を捉えつつ、世界共通ショックの影響を推計することを試みた。分析によれば、日本の輸出・生産の2007〜08年頃までの好調と、2008〜09年の大きな落ち込みは、グローバルな金融ショックとみられる世界共通要因によって説明される部分が大きい。また、新興国が先進国、とくに日本に与える経済的な影響力は、2000年代を通じて高まってきた。新興国固有のショックは、グローバル金融危機の影響が大きかった局面でも、日本の生産にプラスの影響を与えている。このように、新興国経済が日本経済に与える影響が強まってきた背景には、世界経済に占める新興国のウェイトが高まってきたことと、日本の製造業が新興国の需要を積極的に取り込んできたことの、両面が作用していると考えられる。今後、新興国需要はさらに拡大を続けるとみられるが、それを巡るグローバル競争の激化も予想される。その競争で優位を保つことが、日本経済の先行きにとって重要である。また、新興国がインフレや景気の過熱を避けながら持続的な成長を遂げられるかどうかは、日本経済にとって従来以上に大きな意味を持つようになってきている。

日本銀行から

日銀レビュー・シリーズは、最近の金融経済の話題を、金融経済に関心を有する幅広い読者層を対象として、平易かつ簡潔に解説するために、日本銀行が編集・発行しているものです。ただし、レポートで示された意見は執筆者に属し、必ずしも日本銀行の見解を示すものではありません。

内容に関するご質問および送付先の変更等に関しましては、日本銀行調査統計局 関根敏隆(E-mail :toshitaka.sekine@boj.or.jp)までお知らせ下さい。