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新興国への資本流入と米国への還流について

2010年12月22日
金融市場局 小林俊、吉野功一

要旨

先進国における緩和的な金融環境の長期化などを背景に、投資家の利回り追求(search for yield)のインセンティブは強まっており、これが高い成長期待(期待収益率)を持つ新興国への資本流入を促している。こうした中、新興国間の資産価格変動の相関は、過去に例を見ないほどに強まっており、国際分散投資のメリットは低下している。他方、大量の資本流入に直面した新興国の多くでは、自国通貨の急激な増価圧力を減殺すべく、為替市場に対し大規模な介入を実施しているとみられる。その結果、積み上がった外貨準備は、最近、より長めの米国債で運用される傾向が強まっており、これが米長期金利に対する低下圧力を生んでいる可能性がある。こうした米長期金利の低下は、投資家の利回り追求の動きを一段と強めることを通じて、新興国への資本流入を加速する方向に作用する。最近の国際的な資本移動においては、先進国と新興国の間でこうしたフィードバック・ループが形成されている様子が窺われており、資本フローが逆回転する可能性など、今後の動向を注意深く見ていく必要がある。

日本銀行から

日銀レビュー・シリーズは、最近の金融経済の話題を、金融経済に関心を有する幅広い読者層を対象として、平易かつ簡潔に解説するために、日本銀行が編集・発行しているものです。ただし、レポートで示された意見は執筆者に属し、必ずしも日本銀行の見解を示すものではありません。

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