企業収益と設備投資
―企業はなぜ設備投資に慎重なのか?―
2016年4月15日
調査統計局 加藤直也、川本卓司
要旨
本稿では、企業が、過去最高水準にある収益との対比でみて、慎重な設備投資行動を続けている背景について考察する。具体的には、まず、今回の景気回復局面における企業収益の拡大には、売上数量(数量要因)の増加よりも、交易条件(価格要因)の改善が大きく寄与している事実を確認する。そのうえで、簡単な時系列分析の手法を用いて、(1)数量要因による利益率の上昇は、比較的早いタイミングで、設備投資に対し統計的に有意なプラスの効果を及ぼす一方、(2)価格要因による利益率の上昇は、当面設備投資に有意な影響を与えず、かつ有意であってもその効果が現れるまでに相応の長いラグを伴うことを示す。これは、数量面の改善は、設備稼働率の改善を通じて、実質期待成長率の上昇(生産能力の拡大意欲)につながりやすいのに対し、価格面の改善は(少なくとも当初は)一時的な収益押し上げ要因と認識されやすいため、と解釈できる。
日本銀行から
日銀レビュー・シリーズは、最近の金融経済の話題を、金融経済に関心を有する幅広い読者層を対象として、平易かつ簡潔に解説するために、日本銀行が編集・発行しているものです。ただし、レポートで示された意見は執筆者に属し、必ずしも日本銀行の見解を示すものではありません。
内容に関するご質問等に関しましては、日本銀行調査統計局経済調査課景気動向グループ(代表03-3279-1111)までお知らせ下さい。