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金融活動指標の予測力―海外諸国の銀行危機の事例を用いた分析―

2021年10月8日

金融機構局 須藤直、法眼吉彦、平野竜一郎*
*現・総務人事局

要旨

日本銀行の「金融システムレポート」では、国内金融活動の過熱による金融面の不均衡を早期に把握する観点から、1980年代後半のバブル期にトレンドからの乖離度合いが大きくなった金融活動指標の動きを点検している。本稿では、17か国を対象に各国データを用いて、わが国と同様の金融活動指標を作成し、それぞれの国での「銀行危機」への予測力を分析した。分析の結果、金融活動指標の中でも民間部門全体の与信活動を最も広く捉えると考えられる「総与信・GDP比率」などの指標は、広範な銀行危機に対しても相応の予測力を持つことが分かった。もっとも、銀行危機の性質は多様であり、国内金融活動の過熱が起こらないもとで発生した銀行危機では、金融活動指標の予測力は必ずしも高くないことも分かった。また、「総与信・GDP比率」について、「赤」点灯期間が長期化する場合や他の指標と同時に「赤」点灯する場合、銀行危機の発生確率が相応に高まる傾向があることも確認された。

日本銀行から

日銀レビュー・シリーズは、最近の金融経済の話題を、金融経済に関心を有する幅広い読者層を対象として、平易かつ簡潔に解説するために、日本銀行が編集・発行しているものです。ただし、レポートで示された意見は執筆者に属し、必ずしも日本銀行の見解を示すものではありません。
内容に関するご質問等に関しましては、日本銀行金融機構局金融システム調査課(代表03-3279-1111)までお知らせ下さい。