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コロナ禍における銀行券の動向

2021年12月10日
企画局 吉澤謙人、前橋昂平、柳原弘明、門川洋一
発券局 稲田将一

要旨

近年、クレジットカード決済の拡がりなどから現金決済の機会が減少する一方、銀行券発行残高が増加する「銀行券のパラドックス」と呼ばれる現象が、グローバルに観察されている。背景として、低金利環境による現金保有の機会費用の低下や、経済の不確実性の高まりを受けた予備的需要の強まりなど、取引動機以外での銀行券へのニーズの高まりが指摘されている。コロナ禍では、このパラドックスが更に強まった。すなわち、景気の悪化や、「巣ごもり消費」によるEコマースの拡大により、現金決済の機会は一段と減少したが、銀行券発行残高は増加した。実証分析によれば、公衆衛生上の措置は銀行券発行残高を有意に押上げたほか、その効果は昨春の感染症拡大直後が最大で、その後は縮小した。感染症に伴う不確実性の高まりを受けた予備的な現金保有ニーズが、銀行券の動向に影響したとみられる。

日本銀行から

日銀レビュー・シリーズは、最近の金融経済の話題を、金融経済に関心を有する幅広い読者層を対象として、平易かつ簡潔に解説するために、日本銀行が編集・発行しているものです。ただし、レポートで示された意見は執筆者に属し、必ずしも日本銀行の見解を示すものではありません。
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