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米国における家計のバランスシートと個人消費

2023年4月12日

国際局 東宏香、眞壁祥史、平田渉

要旨

本稿では、金融環境の引締まりに伴う米国住宅市場の減速などを踏まえ、住宅を主要な構成要素とする米国家計のバランスシートの状態が個人消費に及ぼす影響を考察する。米国では、住宅ローンの大半が固定金利物で占められるもと、今次の金利上昇局面でも住宅ローンの利払い負担は抑制されているほか、延滞率も低位にある。また、住宅価格の変動により家計の借入余力も変動するというメカニズムは過去と比べて発現しづらくなっている。さらに、消費者信用の状況をみると、低・中所得層に属する家計を中心に利用が増加しているが、過度な増加はみられず、デフォルトリスクの高まりは抑制されているとみられる。以上より、家計のバランスシート調整圧力は小さく、個人消費は金融環境の引締まりに対して一定の頑健性を有していると考えられる。ただし、インフレ圧力が残存し、一段の金融引締めが行われる結果、雇用環境が急速に悪化する場合や、住宅価格の下落ペースが加速する場合などには、こうした状況が反転し、個人消費が下押しされる可能性に留意する必要がある。

日本銀行から

日銀レビュー・シリーズは、最近の金融経済の話題を、金融経済に関心を有する幅広い読者層を対象として、平易かつ簡潔に解説するために、日本銀行が編集・発行しているものです。ただし、レポートで示された意見は執筆者に属し、必ずしも日本銀行の見解を示すものではありません。
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