人口動態の変化が労働市場や賃金の動向に与える影響
2024年8月20日
- 池田周一郎*、川野潮、高田耕平、眞壁祥史、八木智之**
- *現・総務人事局
- **現・企画局
要旨
わが国の人口動態の見通しを前提にすると、先行き、労働供給量の大幅な増加は見込みにくく、人手不足が継続する可能性が高い。本稿では、こうした人手不足が労働市場や賃金の動向に与える影響を考察した。わが国の労働市場では、流動性の低さや、雇用形態等によって賃金決定メカニズムが異なること――いわゆる「二重構造」――が課題とされてきたが、人手不足感が強まるもとで、状況に変化がみられ始めている。すなわち、本稿の分析結果をみると、転職市場の拡大によって雇用の流動性が変化し始めていることや、これまで異なる仕組みで賃金が決まってきた市場間で、相互に連関して賃金が上昇するメカニズムが働き始めている――例えば、パートの賃金上昇が正社員の賃金上昇圧力となっている――ことが窺える。先行き、こうした変化が続き、企業の賃金設定行動が一段と積極化する可能性がある。
日本銀行から
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