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流通市場における社債スプレッドについて

1999年 9月 6日
植木修康

日本銀行から

日本銀行金融市場局ワーキングペーパーシリーズは、金融市場局スタッフ等による調査・研究成果をとりまとめたもので、金融市場参加者、学界、研究機関などの関連する方々から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融市場局の公式見解を示すものではありません。

なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに対するお問合せは、論文の執筆者までお寄せ下さい。

以下には、(要旨)を掲載しています。全文は、こちら (kwp99j05.pdf 290KB) から入手できます。

要旨

 本稿では、一昨年秋以降急速な拡大を遂げている国内普通社債市場について、流通利回りの対国債利回りスプレッド(社債スプレッド)と、格付、年限、業種の相関関係を分析したほか、発行体の期待デフォルト確率に基づいた、社債スプレッドの理論値と、市場で実際に観察される社債スプレッドの大きさの比較を行った。また、公的資本注入や日本銀行による一段の金融緩和措置等一連の金融経済安定化策実施の下での最近の社債スプレッド縮小について、そのインプリケーションを探った。

 社債スプレッドは、格付、年限及び特定業種に要求されるプレミアムと高い相関を有しており、また、これらを説明変数とする社債スプレッド関数を推計すると、高い決定係数が得られるとともに、同係数は上昇傾向を辿っている。このように、わが国の社債流通市場では、投資家が、社債投資におけるリスクをそれなりに客観的に評価する姿勢を取っており、さらにそうした動きが強まってきている可能性が示唆される。もっとも、民間格付会社が公表している累積デフォルト確率に基づいてBBB格銘柄の理論的な社債スプレッドの水準を求めると、市場で実際に観察されている水準と比べてかなり小さく、実際の社債スプレッドには、投資家の将来のデフォルト確率に関する上振れ予想等が反映されている可能性が大きい。/p>

 なお、本年3月以降の社債スプレッドの動きをみると、4~6月には3年物での縮小が顕著となった一方、6月中旬以降は、むしろ5~7年物での縮小が大幅となった。このことは、投資家が、まず6月初にかけて、先行き3年程度における期待デフォルト確率を下方修正した後、7月末にかけては、4~5年先といったより遠い将来における期待デフォルト確率まで低下させた可能性を示唆するものと考えられる。

キーワード:社債流通市場、信用リスク、社債スプレッド