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日本の高齢者の貯蓄行動(ライフサイクル仮説の再検証)

− 総務庁「全国消費実態調査報告」の個票データを用いた分析 −

2000年 8月
中川忍
須合智広

日本銀行から

日本銀行調査統計局ワーキングペーパーシリーズは、調査統計局スタッフおよび外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行あるいは調査統計局の公式見解を示すものではありません。

なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関するお問い合わせは、論文の執筆者までお寄せ下さい。

以下には、(要旨)を掲載しています。全文は、こちら (cwp00j13.pdf 76KB) から入手できます。

要旨

 本稿は、総務庁「全国消費実態調査報告」の個票データを用い、子や孫の世帯と同居している高齢者も考慮した高齢者全体の貯蓄行動を分析し、90年代入り後の日本において、ライフサイクル仮説が成立しているかどうかを再検証したものである。

 具体的には、1994年の個票データを基に、世帯主が非高齢者(59歳以下)の世帯に同居する高齢者(60歳以上)のデータを取り出し、それらを世帯主が60歳以上の高齢者のデータに移し替える(同時に、世帯主が高齢者の世帯に同居する非高齢者のデータを、非高齢者の年齢に応じた世代に移し替える)ことによって、年齢別にみた平均貯蓄率を計算した。結果をみると、高齢者になっても貯蓄率が依然2桁のプラスの値をとっており、米国で観察されるような明確なライフサイクル型の貯蓄パターンは確認できなかった。

 先行研究によれば、こうした高齢者の高い貯蓄率は、高齢者が要介護となることへの不安を抱き、予備的貯蓄動機を高めていることが主因とされている。今後、高齢化が一段と進行していく日本において、こうした不安を解消していくような施策が重要な課題のひとつと言えよう。