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JGB先物市場の注文付け合わせ方法と価格変動

戦略的注文行動の分析、市場環境に応じた適切な取引ルールの存在

2001年 5月 7日
副島豊*1

日本銀行から

日本銀行金融市場局ワーキングペーパーシリーズは、金融市場局スタッフ等による調査・研究成果をとりまとめたもので、金融市場参加者、学界、研究機関などの関連する方々から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融市場局の公式見解を示すものではありません。

なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに対するお問合せは、論文の執筆者までお寄せ下さい。

以下には、(要旨)を掲載しています。全文は、こちら (kwp01j01.pdf 237KB) から入手できます。

  1. *1日本銀行金融市場局金融市場課市場企画グループ E-mail:yutaka.soejima@boj.or.jp

(要旨)

 市場流動性が高いオーダードリブン(注文駆動型)市場では、注文の付け合わせ方法が価格変動や市場参加者の注文行動に影響を与え得る。一日数千件の取引が行われているJGB先物市場において注文付け合わせ速度が高められたケースでは、板(注文控え)の状態やその推移が市場参加者にとって判り難くなり、その結果、注文が意図通りに約定されない現象が以前より増加し、短期的な価格変動が高まった。また、こうした約定の不確実性の高まりは注文行動の変化をもたらし、これも価格変動に影響を及ぼしたと指摘されている。本稿では、板情報の誤認(認知ラグ)が発生した点に注目し、付け合せ速度を速めることが価格変動にどう影響するかを分析した。制度変更前後でJGB市場を巡る環境が大きく異なっているため、取引データの実績値をもって付け合せ方法の影響を比較することは出来ない。そこで、まず板へのオーダーフローを復元し、これをパターン分けすることで、板の状況に応じた戦略的注文行動が存在することを確認した。こうした注文行動特性は、直前の注文タイプやビッドアスクスプレッドの大きさを条件とした条件付確率や、注文タイプごとのサイズ分布で捕らえている。次に、板状況や直前の注文に応じて確率的に注文が生成される注文駆動型の人工証券市場を作成し、板情報の誤認が価格変動にどう影響するかをシミュレーションにより分析した。その結果、流動性が高い市場では、板情報の誤認に基づく注文が僅かに混じるだけで、価格変動がボラタイルになることが確認された。