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オペレーショナル・リスク管理の高度化に関する論点整理と今後の課題 1

---- 定量的リスク管理手法導入への取組みを中心に

2002年 2月21日
樋渡淳二
足田浩

日本銀行から

考査局ワーキングペーパーシリーズは、考査局のスタッフによる調査・研究成果を編集したもので、うちディスカッションペーパーシリーズは、特に金融問題に関する議論の材料を提供すると共に、実務家や研究者等の有識者の方々から幅広くコメントを頂戴することを目的としています。ただし、論文の内容や意見は、日本銀行あるいは考査局の公式見解を示すものではありません。

なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関するお問い合わせは、各論文の執筆者までお寄せ下さい。

以下には、(はじめに)を掲載しています。全文は、こちら (bdp02j01.pdf 194KB) から入手できます。

はじめに

 従来、金融機関の間では、オペレーショナル・リスク 2 は広範多岐に亘るため、これを定量的に把握することは容易でないと考えられてきた。「計量化できないリスクをオペレーショナル・リスクと呼んでいる」としていた金融機関もあったほどである。しかしながら、ここ2〜3年、多くの邦銀大手行ではオペレーショナル・リスク計量化への取組みを進めている。中には、信用リスクや市場リスクと同様に、オペレーショナル・リスクにもリスク量に見合った自己資本の割当を行うなど、定量的な統合リスク管理の枠組みに活用する事例さえ見られている。

 金融機関としてこうした取組みをより確かなものとするためには、計量化を活用したオペレーショナル・リスク管理の有効なフレームワークが不可欠である。そこで、本稿では、こうしたフレームワークの構築に資する観点から、リスク計量化の技術的な側面よりも、むしろ、リスク管理の体制を強化するためのツールとして、計量化を如何に効果的に活用していくかといった面に主眼を置いて議論したい。

 なお、本稿の構成は、まず前半で、邦銀を取巻く環境変化による影響を踏まえて、オペレーショナル・リスク計量化の目的を整理した上で、オペレーショナル・リスクと信用リスク、市場リスクとの相違点、計量化の具体的な手法や邦銀大手行の取組み状況等を概観する。後半では、ひとつの考え方として、定量的管理と定性的管理、監査・検査を有効に組み合わせたオペレーショナル・リスク管理高度化のフレームワークを提示し、計量化していく際の実務上の論点や課題を整理することとする。1 本稿における意見等は、全て執筆者の個人的な見解であり、日本銀行および考査局の公式見解ではない。また、あり得るべき誤りは執筆者個人に帰する。

2 計量化の対象とするオペレーショナル・リスクとしては、一般に事務リスク、システムリスク、法務リスクなどが挙げられる。このほか、戦略リスク、風評リスクなどを含めている金融機関もある。