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いわゆる「追い貸し」について*1

2002年 2月
小林慶一郎
才田友美
関根敏隆

日本銀行から

日本銀行調査統計局ワーキングペーパーシリーズは、調査統計局スタッフおよび外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行あるいは調査統計局の公式見解を示すものではありません。

なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関するお問い合わせは、論文の執筆者までお寄せ下さい。

以下には、(概要)を掲載しています。全文は、こちら (cwp02j02.pdf 238KB) から入手できます。

概要

 ある閾値を超えて債務比率が高まり企業の清算価値が低くなると、銀行は追い貸しを行うインセンティブをもつ。本稿は、この点を理論モデルにより導出し、債務比率がある程度以上高まると貸出が増加に向かうというように、貸出と債務比率が非線形な関係にあるか否かを検証した。その結果、バブル崩壊後、建設・不動産といった非製造業部門を中心に非線形性が顕著になったことがわかった。また、これらの企業では、高債務先で貸出を受けたところほど収益性を低下させる傾向があることも確認した。これらのテスト結果は、(1)こうした企業への貸出が、経営再建の見込みの乏しい貸出という意味で、追い貸しであった可能性が高いこと、また、(2)追い貸しが建設・不動産といった非製造業部門の効率性を引き下げたこと、を示唆するものである。

  1. *1本稿の作成にあたっては、種村知樹氏(現日本銀行人事局)、吉野太喜氏(東京大学大学院・経済学研究科)の協力を得た。また、ドラフト作成段階では、櫻川昌哉氏(名古屋市立大学)、鶴光太郎氏(経済産業研究所)のほか、日本銀行の多くのスタッフから有益なコメントを得た。この場を借りて感謝の意を表したい。もちろん、本稿のありうべき誤りは全て筆者に属するものである。