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新しいバーゼル合意におけるオペレーショナル・リスクの扱いに関する検討状況

2002年 2月20日
原田英治

日本銀行から

日本銀行信用機構室ワーキングペーパーシリーズは、信用機構室スタッフ等による調査・研究成果をとりまとめたもので、内外の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行あるいは信用機構室の公式見解を示すものではありません。

なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに対するお問い合わせは、論文の執筆者までお寄せください。

以下には、(要旨)を掲載しています。全文は、こちら (fwp02j01.pdf 93KB) から入手できます。

要旨

 バーゼル銀行監督委員会(以下、バーゼル委)では、現在、バーゼル合意の抜本的な見直し作業を行なっている。現行のバーゼル合意では、信用リスクとマーケット・リスク(トレーディング勘定)のみを明示的に計測しており、その数値に8%を掛けて算出した所要自己資本は、信用リスクやマーケット・リスク以外の「その他リスク」も暗黙裡にカバーしていると理解されている。しかし、銀行業務の多様化に伴い、例えば資産管理や決済業務にかかるリスクなど、信用リスクやマーケット・リスクを計測するだけではとらえられないリスクが増大してきており、また、銀行ごとの経営戦略の多様化を受けて、銀行間でそうしたリスクの重要性に大きな差が生じてきている。例えば、ある銀行が資産管理業務に特化し、信用リスクをほとんど取らない一方でオペレーショナル・リスクが大である場合、現行規制では必ずしも対処できない。

 こうした変化を踏まえ、今回のバーゼル合意見直しでは、「その他リスク」の一部であるオペレーショナル・リスクを独立にとらえることとなった。具体的には、2001年1月に公表した第二次市中協議案(以下、第二次案)で提示している通り、新しいバーゼル合意を構成する「三本の柱」のそれぞれでオペレーショナル・リスクを以下のように扱うべく検討が進められている。

  • 第一の柱:信用リスクやマーケット・リスクとは独立したリスクとしてオペレーショナル・リスクを認識し、明示的な所要自己資本の賦課を行なう。
  • 第二の柱:銀行は、抱えているリスクを適切に管理するフレームワークを構築し、銀行監督当局はその妥当性を検証する。オペレーショナル・リスクも、その1要素として取り上げられる。
  • 第三の柱:銀行は、オペレーショナル・リスクを含め、抱えているリスクに関する適切な情報開示を行なう。

 本稿では、まず第1章から第3章に、バーゼル委のホームページに過去半年ほどの間に公表されたオペレーショナル・リスクの扱いに関する下記3本のペーパーの位置付けを整理した上で、それぞれのペーパーの主な要点を説明する。

  • オペレーショナル・リスクの規制上の取扱いに関するワーキング・ペーパー(2001年9月公表)
  • オペレーショナル・リスクの管理と監督に関するサウンド・プラクティス(2001年12月公表)
  • オペレーショナル・リスクに係る定量的影響度調査:損失データの集計結果および今後の作業上の留意事項(2002年1月公表)

 また、第4章では、今後、バーゼル委で検討を進めることが予定されている作業上の課題を示す。