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東アジアの貿易を巡る分析

— 比較優位構造の変化、域内外貿易フローの相互依存関係 —

2002年 4月24日
磯貝孝
森下浩文
ラスムス・ルッファー
(欧州中央銀行)

日本銀行から

日本銀行国際局ワーキングペーパーシリーズは、国際局スタッフによる調査・研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行あるいは国際局の公式見解を示すものではありません。

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以下には、(要旨)を掲載しています。全文は、こちら (iwp02j01.pdf 445KB) から入手できます。

要旨

  • 日本、米国、東アジアの地域間貿易および東アジアの域内貿易においては、輸出と輸入に関して密接な相互依存関係が存在している。そこには、東アジアが日米企業の生産拠点としての役割を果たしているという事実が大きく影響している。特に、IT関連に関しては、東アジアは「世界の供給基地」という位置付けにある。

  • 本稿では、東アジアの貿易に関する特徴点を大まかに整理した上で、財別にみた東アジア各国の貿易構造の特徴について、主に「比較優位・劣位」、「産業内貿易」という観点から幾つかの指標を計算し、分析を試みた。次に、日本、米国と東アジアの貿易および東アジア域内諸国間の貿易について、それらが動学的にどのような相互作用を及ぼしているのかについて、VARモデルを用いて分析した。

  • 「比較優位・劣位」、「産業内貿易」の分析からは、IT関連財等について、シンガポール・マレーシアなどが輸出・輸入とも世界平均を大幅に上回るシェアを持ち(開放型の貿易構造)、IT部品等の生産拠点として機能している姿がみてとれた。東アジアの多くの国では、IT関連財等について比較優位を有しており、90年代を通じて比較優位度の上昇(または、比較劣位度の低下)がみられた。また、産業内貿易の進展度合いについては、NIEsがもっとも高く、続いてASEAN、中国の順となっており、いずれも90年代前半から後半にかけて一段の進展がみられた。

    こうした事実から、日本や米国などからの直接投資の増大等を背景に、東アジアの多くの国で、IT関連財等についての比較優位度が上昇(または、比較劣位度が低下)し、同時に域内における水平分業の進展により産業内貿易が進展したことが確認できた。

  • 「生産拠点としての東アジア」という視点に立てば、日本や米国との地域間貿易を投入・産出の関係と捉え、東アジアを巡る貿易フローを一つの生産システムの動きと考えることも可能である。貿易フローから構成されたVARモデルによる分析からは、東アジアと、日本および米国との貿易において、それぞれ輸出入が密接に関連していることが確かめられ、貿易フローの面からも東アジアが実際に日本および米国の生産拠点として機能していることが示された。

    一方、東アジアを介した地域間貿易の特徴としては、日本の対東アジア輸出の増大は、東アジアの対米輸出および東アジア域内の貿易の増大につながる一方で、米国の対東アジア輸出の増大が東アジアの対日輸出および域内貿易の増大をもたらす度合いは小さいという非対称性が存在することが確かめられた。こうした非対称性は、日本から東アジアへ中間財や資本財が輸出され、東アジア域内での様々な生産分業を経て、最終的に米国に輸出されるという間接的な貿易フローが存在することを示唆している。

    また、東アジアの域内貿易は、他地域との間の貿易フローに影響される度合いが大きいが、日米間の比較では、対日貿易の影響を相対的により大きく受けていることがわかった。