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JASDAQ市場のマーケット・マイクロストラクチャーとスプレッド分布

2002年 3月13日
宇野淳*1
嶋谷毅*2
清水季子*3
万年佐知子*4

日本銀行から

日本銀行金融市場局ワーキングペーパーシリーズは、金融市場局スタッフ等による調査・研究成果をとりまとめたもので、金融市場参加者、学界、研究機関などの関連する方々から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融市場局の公式見解を示すものではありません。

なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに対するお問合せは、論文の執筆者までお寄せ下さい。

以下には、(要旨)を掲載しています。全文は、こちら (kwp02j02.pdf 200KB) から入手できます。

  1. *1日経QUICK 情報金融工学グループ e-mail: juno@nqi.co.jp
  2. *2日本銀行 金融市場局 金融市場課 e-mail: takeshi.shimatani@boj.or.jp
  3. *3日本銀行 金融市場局 金融市場課 e-mail: tokiko.shimizu@boj.or.jp
  4. *4日経QUICK 情報金融工学グループ e-mail: mannen@nqi.co.jp

(要旨)

 わが国のJASDAQ(店頭)市場は、同じ市場のなかにマーケットメイク(以下、MMと呼ぶ)型とオーダードリブン(以下、ODと呼ぶ)型の取引システムを共存させている.取引メカニズムの違いが銘柄間の価格形成に及ぼす影響は、マーケットマイクロストラクチャーの研究における重要な関心事項であり、本稿では、JASDAQ市場のMM銘柄とOD銘柄のスプレッド分析から、取引コストなどへの影響を実証的に検証した.

 MM銘柄は、銘柄の時価総額によらず取引可能時間が長く、安定したスプレッドが形成されている.ボラティリティも安定的である.スプレッドは2ティック以上に開いている割合が高いが、約定価格の30%前後がスプレッドの内側で成立しており、最良気配と実際の約定価格が一致しない割合が高い.

 一方、OD銘柄は取引時間中でもスプレッドがなかったり、場中の平均的なスプレッドの大きさがMM銘柄の2倍近く開いているなど、取引がしにくい場合がある。ただ、売買参加者の指値注文行動により約定成立直前にはスプレッドは大幅に縮小し、MM銘柄並みか、これを下回る大きさになっている.執行価格に敏感な指値注文者の行動が直接スプレッドに反映している.

 このような特徴は、同期間の観測値によるMM銘柄とOD銘柄のクロスセクション分析で見られるだけでなく、売買システムを変更した銘柄の事前事後の分析でも確認されており、マーケットメイカーの行動パターンと指値注文者の行動の違いを反映したものといえる.同様のマーケットメイカーの行動は、欧米市場の実証分析でも報告されており、これらに共通したわが国の制度要因としては、小口注文自動執行システムの存在とリーブオーダー制度の関係が示唆される.