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株式保有構成と企業価値

コーポレート・ガバナンスに関する一考察

2002年 6月12日
西崎健司*1
倉澤資成*2

日本銀行から

日本銀行金融市場局ワーキングペーパーシリーズは、金融市場局スタッフ等による調査・研究成果をとりまとめたもので、金融市場参加者、学界、研究機関などの関連する方々から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融市場局の公式見解を示すものではありません。

なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに対するお問合せは、論文の執筆者までお寄せ下さい。

以下には、(要旨)を掲載しています。全文は、こちら (kwp02j04.pdf 308KB) から入手できます。

  1. *1日本銀行金融市場局金融市場課 e-mail: kenji.nishizaki@boj.or.jp
  2. *2横浜国立大学大学院国際社会科学研究科 e-mail: kurasawa@ynu.ac.jp

(要旨)

 本稿は、株式保有構成と企業価値の関係について経済学的視点から分析することにより、わが国における株主によるコーポレート・ガバナンス(企業統治)について考察することを目的としている。具体的には、わが国の株式保有構成の特徴と中・長期的な動向についてファクト・ファインディングを行うとともに、金融機関、海外投資家、機関投資家等の外部の大口株主によるモニタリングが企業価値に与える影響について理論的に考察した。その上で、マクロ・データとミクロ・データの両方を使用して実証分析を行い、わが国において大口株主によるモニタリング活動が企業価値に与えた影響と株式保有構成の変化が企業価値に与えた影響について評価を試みた。  分析の結果を整理すると次の通りである。

  1. 株主と経営者が完全な契約を結べない場合、外部の大口株主(金融機関、非金融法人、海外投資家、機関投資家)がモニタリング活動等を通じて企業価値に与える影響は単純なものではなく、実証的なものである。本稿の実証分析では、外部の大口株主がモニタリング活動等を通じて企業価値に対して正の影響を与えることが示された。こうした傾向は1990年代以降明確化してきており、1990年代以降外部の大口株主によるガバナンスの役割が増している、と解釈できる。
  2. 一方、個人投資家のプレゼンスは企業価値に対して負の影響を与えることが確認された。これは、株式が小口に分散保有される場合に発生する可能性があるモニタリングに関するフリーライダー問題が生じている可能性が高いことを示す。この傾向は、特に1990年代に明確化している。
  3. 大口株主について部門毎にみると、非金融法人企業がモニタリング活動等を通じて企業価値に与える影響は確認されなかった。むしろ、1990年代については、株式の持合いが、企業価値に負の影響を与える可能性が示された。一方、金融機関と海外部門については、株主としてのモニタリング活動等を通じて企業価値に対して正の影響を与える傾向がみられた。特に、1990年代において株式市場のグローバル化などを背景にプレゼンスが大幅に拡大した海外部門(外国人投資家)については、時価総額が大幅に下落した1990年代以降のわが国株式市場において、唯一保有株式価値が上昇するなど、投資家・株主として国内投資家に勝るパフォーマンスであったことが示された。

キーワード:
コーポレート・ガバナンス、企業価値、株式保有構成、トービンのq、パネル分析