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フランスにおける中小企業向け公的金融制度の特徴

2002年 7月24日
大山陽久
成毛建介

日本銀行から

海外事務所ワーキングペーパーシリーズは、日本銀行海外事務所スタッフ等によるリサーチ活動の成果をとりまとめたもので、金融市場参加者、研究者等、有識者の方から幅広くコメントを頂戴する事を企図しています。ただし、論文の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは各海外事務所の公式見解を示すものではありません。

以下には、(要旨)を掲載しています。全文は、こちら (owp02j01.pdf 175KB) から入手できます。

要旨

  • 中小企業の育成・振興はどの国においても経済政策上重要な課題である。一般に中小企業向け金融の充実を図るうえでの難しさは、政府が政策的に決定する公的金融と純粋な市場原理に基づく民間金融とを如何にバランスさせ効率的な資源配分を図るか、という点にあると考えられる。
  • この点、フランスでは、中小企業金融への公的関与自体は不可欠としつつ、公的金融が肥大化して民間金融機関をクラウドアウトしないよう、以下のように様々な工夫がみられる。

 なお、公的関与の対象となる「中小企業」金融を定義するにあたり、大企業が一定比率以上出資している「大企業系列の中小企業」を対象外として排除している。

(1)中小企業開発銀行(BDPME)による部分保証・協調融資

保証・融資共通の特徴点

  • 政府系中小企業金融機関と位置付けられるBDPMEは、保証により民間金融機関のリスクを「一部」負担したり、民間金融機関と同条件で「協調」融資する形で中小企業向け金融を行っており、BDPMEのリスク分担比率は原則50%を上限としている。このようにBDPMEが信用リスクを100%引受けないのは、(1)民間金融機関によるモラルハザードを回避する、(2)公的金融機関の役割はあくまで民間金融機関の「補完」であり民間金融機関と「競争」することではない、といった考え方に基づいている。なお、最近では、協調融資よりもむしろ民間金融機関の審査機能を活用した保証業務の比重が高まる傾向にある。

部分保証における特徴点

  • 中小企業経営者の個人保証の問題、すなわち事業経営に失敗した場合にも最低限の生活を保証し再起のチャンスを与える仕組みをどのように整えるか、という点についても工夫がみられる。すなわち、BDPMEが部分保証を行う条件として、当該融資案件において民間金融機関が中小企業経営者に求める個人保証を一定限度に制限している(民間金融機関による融資総額の50%までに制限、経営者の自宅不動産を担保とすることを禁止等)。
  • 審査コスト軽減のため、BDPMEによる保証の際に民間金融機関の審査結果を受入れることを許容する一方、債務不履行の場合には、民間銀行による審査がきちんと行われたか否かを一定の基準に照らし事後的にチェックし、不十分と判断された場合にはBDPMEは保証履行義務を負わない仕組みとしている。
  • BDPMEによる保証は、その子会社SOFARIS内に設置された保証基金を通じて行われる。保証基金自体は全額政府出資であり、それが毀損した場合も、まずは政府支出により補填される筋合いにある。しかしながら、これで不十分な場合、最終的には民間銀行も42%出資しているSOFARIS自身の資本金が取り崩されることとなる。この意味で、SOFARISによる保証は民間銀行自身による「互助」といった側面も併せ持っている。
  • また、フランスの将来を担う先端産業分野のスタートアップ企業向け出資の保証を行う制度もある。

協調融資における特徴点

  • BDPMEが協調融資を行う際の金利、返済条件、担保順位等は、民間金融機関と全く同等に設定されている。

(2)産業振興向け預金口座(CODEVI)

  • 貸出面ではなく預金面において、税制上の優遇措置を実施したもの。当制度により集められた原資は、すべて中小企業向け融資に充てられることとなっており、しかもその大部分(8割)が、預金を受けた当該民間金融機関自身により中小企業向けに直接貸出されている。

(3)利子補給制度

  • 民間金融機関の行う中小企業向け貸出について、政府が利子補給を行うことにより、市場原理を尊重しつつ中小企業向け貸出総量の増加を狙ったもの。すなわち、具体的な貸出先、金利、貸出額等の判断は民間金融機関自身に委ねつつ、政府が利子補給をすることにより銀行の貸出スタンスを積極化させる筋合い。

 もっとも、当制度は、欧州委員会規則等により民間金融機関への政府補助金が原則禁止されたこと等から、現在では制度縮小の方向にある。