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アジア太平洋地域における相互連関の深化

 —計量モデルによる分析*

2002年12月
鎌田康一郎
中山興
高川泉

日本銀行から

日本銀行調査統計局ワーキングペーパーシリーズは、調査統計局スタッフおよび外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行あるいは調査統計局の公式見解を示すものではありません。

なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関するお問い合わせは、論文の執筆者までお寄せ下さい。

以下には、(要旨)を掲載しています。全文は、こちら (cwp02j09.pdf 369KB) から入手できます。

要旨

 アジア太平洋地域における国際分業の進展は、「東アジアの奇跡」を支える礎であったが、国家間にまたがる連鎖的な経済破綻を捲き起こす可能性を内包していることが、アジア通貨危機で明らかになった。本稿の目的は、アジア太平洋経済(日本、米国、インドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、マレーシア、韓国、香港、中国の10ヶ国)における国際分業体制を単純な形で捉えた計量モデルを構築し、そうした相互依存関係の深化が、各国の経済活動にいかなる影響を与え得るのかを数量的に把握することにある。分析の結果、次のようなことが分かった。(1)日本の景気後退は、アジア地域の景気後退を通じて、日本の輸出にまで跳ね返ってくる可能性がある。(2)円安は、日本の輸出に好都合だが、アジアの景気を減速させる「近隣窮乏化」効果を持つ。(3)一口に海外景気が減速するといっても、震源が米国であるか、アジアであるかで、日本の輸出が受ける効果は異なる。また、モデルには、各国の金利政策、為替政策、資本規制がルールの形で内蔵されており、金融政策のルール変更が国内外に与える影響を数量的に把握することができる。本稿では、この機能を利用して、東アジアの国々にとって、どのような通貨政策が望ましいのかという点を考察した。シミュレーション結果によると、(4)通貨バスケット制が、内外からのショックを和らげる点で、現行の政策レジームやドル・ペッグ制よりも優れた政策レジームである可能性が高い。

* 本稿の作成に当たって、和合肇 名古屋大学教授、加納悟 一橋大学教授、浅子和美 一橋大学教授、福田慎一 東京大学教授、日本銀行の多くのスタッフ、特に赤間弘氏(国際局)から有益なコメントを頂いた。この場を借りて深く感謝の意を表したい。もちろん、あり得べき誤りは全て著者に属する。本稿で述べられた内容は、全て筆者に属し、日本銀行および調査統計局の公式見解を示すものではない。