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わが国のベバリッジ曲線の再検討*

2003年 2月
鎌田康一郎
真木和彦

日本銀行から

日本銀行調査統計局ワーキングペーパーシリーズは、調査統計局スタッフおよび外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行あるいは調査統計局の公式見解を示すものではありません。

なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関するお問い合わせは、論文の執筆者までお寄せ下さい。

以下には、(要旨)を掲載しています。全文は、こちら (cwp03j01.pdf 213KB) から入手できます。

要旨

 本稿は、Blanchard and Diamond (1989) によるベバリッジ曲線を基礎にした構造VARを拡張し、70年代後半から2001年に至るまで、いかなる要因がわが国の労働市場を突き動かしてきたのかを分析した。実証分析の結果、(1)景気後退や産業構造の転換に伴う失業は、ショックが発生してから徐々に増加し、長期間持続すること、(2)労働節約投資を伴う経営合理化は、ショック発生直後に失業を増加させた後、比較的短期間で収束することが分かった。また、わが国の失業率が90年代後半以降高止まっているのは、長引く景気の低迷や産業構造の転換といった要因に加え、経営合理化といった要因も大きな比重を持っている可能性が示された。今後の失業率は、合理化の動きが加速する場合は言うに及ばず、仮に一段落したとしても、景気後退や産業構造調整の影響が残存することから、暫くの間、高止まりする可能性が高い。さらに、本稿は、賃金や消費者物価と構造ショックの関係についても分析を行った。実証分析の結果、景気循環は、賃金や消費者物価の変化率に長期的な影響を与えることが分かった。

JEL:
E20, E30, J20, J60;

キーワード:
ベバリッジ曲線、失業率、賃金率、合理化投資

* 本稿の作成過程で、黒田祥子氏(金融研究所)をはじめ、日本銀行の多くのスタッフから有益なコメントを頂戴した。特に、西崎健司氏(日本銀行金融市場局)は、実証研究に必要なデータの提供を快諾して頂いた他、草稿に細かく目を通して頂くなど、プロジェクトの最初から最後まで、多大な貢献をして頂いた。この場を借りて、深く感謝の意を表したい。もちろん、あり得べき誤りは筆者に属する。なお、本論文の内容や意見は筆者個人に属するものであり、日本銀行および調査統計局の公式見解を示すものではない。