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1990年代以降の企業部門の土地投資について*1

2003年 7月
橘永久
関根敏隆

日本銀行から

日本銀行調査統計局ワーキングペーパーシリーズは、調査統計局スタッフおよび外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行あるいは調査統計局の公式見解を示すものではありません。
なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関するお問い合わせは、論文の執筆者までお寄せ下さい。

以下には、(概要)を掲載しています。全文は、こちら (cwp03j06.pdf 305KB) から入手できます。

概要

 本稿では、個別企業の財務データをもとに、「1990年代の土地投資動向がどのような要因の影響を受けていたのか」、「企業が保有する土地の潜在価値と実際の地価水準はどの程度乖離していたのか」を、土地投資関数と土地のqの推計により、検証した。土地投資関数の分析からは、1990年代に法人部門が土地売却超に転じたのは、(i) 主に建設・不動産・総合商社の売上の落ち込みや財務状況の悪化を反映したものであること、(ii) 製造業の海外現地生産の進展も一部影響していること、がわかった。また、土地のqの計測からは、(iii) 製造業や3業種(建設・不動産・総合商社)を除く非製造業の保有する土地の市場価格は、バブル崩壊後、1990年代の半ばには一旦、株価に反映された先行き期待とほぼ整合的なレベルにあったが、最近では株価の大幅な下落に表れている悲観的予測を前提にすると、むしろ地価の割高感が強まっていること、(iv) 3業種の保有する土地の市場価格は、株価に反映された先行き期待との対比でみて、ほぼ常に割高であったこと、がわかった。

  1. *1本稿の作成にあたっては、中島上智氏(東京大学経済学部)の多大な協力を得た。また、ドラフト作成段階では、福田慎一教授(東京大学)、日本銀行調査統計局、金融研究所のスタッフから有益なコメントを得た。