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近年の米国における技術進歩率の計測

2003年 3月12日
加藤涼

日本銀行から

日本銀行国際局ワーキングペーパーシリーズは、国際局スタッフによる調査・研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行あるいは国際局の公式見解を示すものではありません。
なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに対するお問い合わせは、論文の執筆者までお寄せください。

以下には、(要旨)を掲載しています。全文は、こちら (iwp03j01.pdf 692KB) から入手できます。

要旨

  • 90年代後半の米国経済の好調の背景には、いわゆる「IT関連投資」の増加による「生産性上昇」が存在していたとの議論が活発であった。確かに、90年代後半の米国経済は、非製造業を中心に4%前後の成長を続けており、年率2.5%程度の労働生産性の上昇を伴っていた。
  • しかし、労働生産性(一人当たり実質生産)は、過剰な設備投資やレイオフ等による人員削減によっても上昇する指標であり、必ずしも技術進歩を表しているとは言えない。そこで、純粋な技術進歩を表す全要素生産性(total factor productivity:TFP)を計測してみると、技術進歩による成長押し上げ効果は、製造業ではかなり顕著に確認できるが、ウェイトの大きい非製造業では、資本や労働といった生産要素の投入の影響が支配的であり、「爆発的な技術革新」が生じていたとまでは言い難いことが分かる。
  • さらに詳細な区分から、技術進歩が顕著であった業種を調べると、製造業では、耐久財、非製造業では金融・保険業といった分野で、比較的高いTFP成長率が確認できる一方、サービス業種では殆ど技術進歩は顕在化しなかったことが確認された。
  • 計測結果から米国経済全体のTFPの推移を求めてみると、TFP上昇率は90年代後半に、年率で+1%程度、加速したものの、足許は再び95年以前の上昇率と同程度にまで戻っている様子が窺われる。

以上