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ゼロ金利政策下における金利の期間構造モデル

2003年 3月 7日
丸茂幸平*1
中山貴司*2
西岡慎一*3
吉田敏弘*4

日本銀行から

日本銀行金融市場局ワーキングペーパーシリーズは、金融市場局スタッフ等による調査・研究成果をとりまとめたもので、金融市場参加者、学界、研究機関などの関連する方々から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融市場局の公式見解を示すものではありません。
なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに対するお問合せは、論文の執筆者までお寄せ下さい。

以下には(要旨)を掲載しています。全文は、こちら(kwp03j01.pdf 218KB) から入手できます。

  1. *1日本銀行金融市場局金融市場課(現人事局)
  2. *2日本銀行金融市場局金融市場課 e-mail: takashi.nakayama@boj.or.jp
  3. *3日本銀行金融市場局金融市場課 e-mail: shinichi.nishioka@boj.or.jp
  4. *4日本銀行金融市場局金融市場課兼金融研究所 e-mail: toshihiro.yoshida@boj.or.jp

本稿を作成するにあたり、木島正明教授(京都大学大学院経済学研究科)、長山いづみ助教授(一橋大学大学院国際企業戦略研究科)及び日本銀行スタッフから数多くの有益な示唆を受けた。記して感謝したい。もちろん、有り得べき誤りは筆者達の責任である。

(要旨)

 本稿は、ゼロ金利政策下における金利の期間構造モデルを構築し、国債価格に内包されたゼロ金利政策継続期間に対する情報を抽出することを目的に作成されたものである。ゼロ金利政策実施期間中の我が国のイールド・カーブは、中短期ゾーンの金利水準が著しく低く、Vasicekモデル等の伝統的な金利の期間構造モデルで想定されるイールド・カーブとは形状が大きく異なっている。本稿では、こうした点を踏まえて、ゼロ金利政策の継続期間に対する期待(いわゆる「時間軸効果」)をイールド・カーブの構成要素の1つとして捉えることにより、以下の通りモデルを定式化し実証分析を行った。まず、ゼロ金利政策の実施期間中における金利の期間構造モデルを、従来型のVasicekモデルにゼロ金利政策の継続期間を加味することによって短期金利水準を表現する一方、市場が想定する長期的な金利水準に関しては、リスクの市場価格に集約することで調整するモデルを構築した。次に、導出されたモデルのパラメータを、国債の流通価格を用いて推定し、ゼロ金利政策継続期間に対する確率分布を抽出した。この結果、ゼロ金利政策下におけるイールド・カーブのフィットが、従来型のVasicekモデルと比較して飛躍的に向上したほか、ゼロ金利政策継続期間に対する確率分布を明示することが可能となった。

キーワード:
ゼロ金利政策、時間軸効果、金利の期間構造モデル、Vasicekモデル