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ディスインフレ期における米国の金融政策 (要旨)

2004年 9月
加藤 涼*1
武田 洋子*2

日本銀行から

日本銀行ワーキングペーパーシリーズは、日本銀行員および外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行の公式見解を示すものではありません。
なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関するお問い合わせは、執筆者までお寄せ下さい。

商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行情報サービス局までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。

以下には日本語の(要旨)を掲載しています。

なお、全文は英語のみの公表です。

  1. *1国際局 E-mail: ryou.katou@boj.or.jp
  2. *2金融市場局 E-mail: youko.takeda@boj.or.jp

(要旨)

  • 本稿では、主に2000年以降の米国の金融政策に焦点をあて、低インフレのもとでの金融政策の課題、特徴についてレビューを行った。前半部分は、2002年6月にBoard of Governorsが公表した論文、"Preventing Deflation: Lessons from Japan"の手法を拡張して、米国の金融政策について応用し直したもの。後半部分では、FOMCステートメントのコミットメント効果について、シンプルな動学的一般均衡モデルを用いて分析を行っている。
  • 本稿の主要な結論をまとめると以下の2点。
    1. (1)最適金融政策理論のフレームワークを用いて、2000年以降のフェデラル・ファンド・レートの変化を評価すると、名目金利の非負制約のもとで、インフレとGDPギャップの予測分散の加重和を最小化するような政策運営と概ね整合的。
      ——2000年以降のFFレートの実績値は、通常のテイラー・ルールと比べると遥かに緩和的だが、名目金利の非負制約を考慮した「最適政策ルール」とは近い動き。
    2. (2)2003年8月のFOMCステートメントで述べられた、「金融緩和スタンスを当面の間、持続する」との政策コミットメントの直後、長期金利は殆ど低下しなかった(むしろ、若干上昇した)が、こうした事実をもとにコミットメント効果がなかった(弱かった)と判断することは、必ずしも正しくない。
      ——一般に、「低金利を一定期間、持続する」といったコミットメントが、長期金利に与える影響は定性的にも一意には決まらない。コミットメントが「成功」することによって景気回復期待(ないしはインフレ期待)が高まった結果、足下の長期金利は上昇する可能性もある。実際、推計された米国経済のパラメータ推計値が十分信頼できるとすれば、実効性のある低金利政策コミットメントは米国経済においては、長期金利を僅かながら上昇させる可能性が高い。