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低成長期待と消費者行動:Zeldes-Carroll理論によるわが国消費・貯蓄行動の分析*1

2004年 1月
岡田敏裕*2
鎌田康一郎*3

日本銀行から

日本銀行ワーキングペーパーシリーズは、日本銀行員および外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行の公式見解を示すものではありません。
なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関するお問い合わせは、執筆者までお寄せ下さい。
商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行情報サービス局広報課までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。

以下には(要旨)を掲載しています。全文は、こちら(wp04j02.pdf 557KB) から入手できます。

  1. *1本稿の作成過程で、林文夫教授(東京大学)、村田啓子氏(内閣府)のほか、白塚重典氏(日本銀行金融研究所)、中川忍氏(日本銀行考査局)を含め、日本銀行の多くのスタッフから有益なコメントを頂戴した。この場を借りて、深く感謝の意を表したい。もちろん、あり得べき誤りは筆者に属する。なお、本論文の内容や意見は筆者個人に属するものであり、日本銀行および調査統計局の公式見解を示すものではない。
  2. *2日本銀行調査統計局 e-mail: toshihiro.okada@boj.or.jp
  3. *3日本銀行調査統計局 e-mail: kouichirou.kamada@boj.or.jp

(要旨)

本稿では、不確実性下の最適消費理論として近年脚光を浴びつつあるZeldes-Carroll理論のわが国消費・貯蓄動向に対する適用可能性を探る。同理論によると、1991年以降の資産バブル崩壊期と1997年からの公的年金不安醸成期に貯蓄率が相対的に高まったのは、将来所得の見通しに悲観的になった家計が予備的動機に基づいて貯蓄を増やしたことが原因である。さらに、同理論を用いれば、将来の期待所得成長率が低下すると、消費の所得に対する反応度が低くなる点を理論的に導出することができる。本稿では、こうしたZeldes-Carroll理論の含意を所得見通しの代理変数を用いて実証する。操作変数法による推計結果をみると、理論が予想するように、近年、所得見通しの悪化とともに、消費の所得反応度が低下している様子が確認された。

キーワード:
不確実性、消費関数、予備的貯蓄

JEL:
E21、E27