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非上場企業の設備投資の決定要因:金融機関の健全性および過剰債務問題の影響*1

2005年 2月
福田 慎一*2
粕谷 宗久*3
中島 上智*4

日本銀行から

日本銀行ワーキングペーパーシリーズは、日本銀行員および外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行の公式見解を示すものではありません。
なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関するお問い合わせは、執筆者までお寄せ下さい。
商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行情報サービス局までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。

以下には[要旨]を掲載しています。全文は、こちら(wp05j02.pdf 156KB) から入手できます。

  1. *1本稿の作成にあたっては、小川一夫(大阪大学教授)および、早川英男、西崎健司、佐藤嘉子の各氏をはじめとする日本銀行調査統計局のスタッフの方々から有益なコメントをいただいた。また、赤司健太郎、才田友美の各氏にはデータの提供、図表の作成・整理等で協力していただいた。なお、本稿で述べられた意見、見解は、筆者個人のものであり、日本銀行あるいは調査統計局のものではない。
  2. *2東京大学 e-mail: sfukuda@e.u-tokyo.ac.jp
  3. *3調査統計局 e-mail: munehisa.kasuya@boj.or.jp
  4. *4東京大学

要旨

 本稿では、デフレ下の日本経済における中堅・中小企業の設備投資の決定要因を、非上場企業の財務データやその取引先銀行の情報を使って投資関数を推計することによって考察した。各非上場企業の投資関数を推計した場合、トービンのqやキャッシュ・フローといった標準的な財務変数に加えて、メイン・バンクの健全性、借り手企業のバランス・シート、および取引銀行の数が、各非上場企業の設備投資に対して有意な影響を及ぼすことが明らかになった。一般に、中堅・中小企業は、潜在的な成長可能性が高い企業が多い反面、大企業と比べて代替的な資金調達手段は非常に限られており、中堅・中小企業にとって銀行との取引関係はきわめて重要である。本稿の結果は、取引銀行の健全性の悪化や借り手の過剰債務問題が、流動性制約に加えて、デフレ下の日本経済における中堅・中小企業の設備投資を大きく制約した可能性を示唆するものである。