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スイス国民銀行の金融政策運営:2001〜2004年の経験

2006年5月
大山慎介*1
谷川純子*2

全文は英語のみの公表です。

要旨

スイスでは、2001〜2003年にかけて、地政学的リスクなどに起因する通貨高と、ITバブル崩壊後の世界的な(特にユーロエリアの)景気後退などから、ディスインフレ傾向が強まっていた。そうした下で、スイス国民銀行(Swiss National Bank、以下SNB)は、「事実上のゼロ金利政策」を導入するなど、大幅な金融緩和を行った。その後、2004年半ばになると、ディスインフレ傾向が減衰したことから、SNBは金融緩和の巻き戻しに着手した。本稿では、この間のSNBの金融政策運営とそれに対する金融市場の反応を分析し、特徴を明らかにする。主たる結論は、次の2点である。第1に、金融政策反応関数の推計に基づくと、SNBの大幅な金融緩和は、名目金利の非負制約がある下での最適な政策反応に即したものであったことが強く示唆される。第2に、SNBは、利下げ局面では、結果的に市場参加者の見通しに修正をせまるかたちで政策決定や情報発信を行った。一方、金融緩和の巻き戻し時には、時間をかけて、市場参加者が経済・金融環境の変化などを材料に利上げの可能性を十分に織り込むのを待ってから政策変更を実施した。こうした巻き戻し時の対応は、確率は小さいながらもディスインフレ傾向が再び強まった場合の損失はインフレ率が加速した場合の損失より大きいとの判断から、SNBが頑健な政策運営を行ったものと解釈できる。

本稿の作成に当たっては、日本銀行の多くのスタッフから有益な助言をいただいた。特に鵜飼博史氏、小田信之氏、加藤涼氏、鎌田康一郎氏、木村武氏、鎮目雅人氏、長井滋人氏、堀井昭成氏、渡辺賢一郎氏からは、暫定稿に建設的なコメントを頂戴した。また、渡辺暁子氏には分析を補助していただいた。この場を借りて、深く感謝の意を表したい。文中に残る誤りは、すべて筆者の責任である。また、本稿の意見などはすべて筆者の個人的な見解であり、日本銀行および国際局の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行国際局
    本稿に関する主たる連絡先、Email: shinsuke.ooyama@boj.or.jp
  2. *2日本銀行国際局
    Email: junko.tanigawa@boj.or.jp

日本銀行から

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