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不確実性下における企業の設備投資行動: リアルオプション理論に基づいた実証分析

2006年3月
西岡慎一*1
池田大輔*2

要旨

本稿は、わが国製造業を対象に、上場企業の個別企業データを用いて、プロビット・モデルとトービット・モデルによる実証分析を行い、不確実性が設備投資に与える影響について分析を行ったものである。リアルオプション理論を応用したDixit and Pindyck [1994] 等によると、投資の不可逆性が存在する場合、投資のQ がある閾値水準を超えない限り、設備投資は実行されないほか、不確実性が高まるほどQ の閾値が上昇し、設備投資を抑制する。実証分析の結果、不確実性指標は、Q の閾値に対して有意に正の効果を持つことが示された。従って、理論が示唆する通り、不確実性の上昇はQ の閾値を上昇させ、企業の設備投資を抑制する方向へ働くことが実証的に裏付けられた。また、不可逆性が高まるほどQ の閾値が上昇するとの結果が得られた。こうした結果は、プロビット・モデルとトービット・モデルの違いやQ の定義の違いに関わらず、比較的頑健性が高い。次に、推定結果を利用して、Q の閾値を試算したところ、全企業平均では、バブル崩壊後の1990年代前半、及び2000年代前半において比較的高い水準となった。また、Q の閾値は、一部業種で大きく変動しているものの、小幅な変動に止まる業種も多く、全企業平均では、Q の閾値の変動は、Q の変動と比較して、相対的に小さい。従って、少なくとも上場企業に限れば、設備投資意思決定における不確実性の影響は、Q そのものの変動の影響に比べて、総じて限定的であった可能性がある。

キーワード:
設備投資、不確実性、不可逆性、リアルオプション、Q 、プロビット・モデル、トービット・モデル

本稿の作成にあたり、小川一夫教授(大阪大学)、鈴木和志教授(明治大学)、阿部修人助教授(一橋大学)のほか、日本銀行スタッフから数多くの有益な示唆を受けた。記して感謝したい。もちろん、有り得べき誤りは全て筆者達に帰するものである。また、本稿に記された意見・見解は筆者達個人のものであり、日本銀行及び調査統計局の公式見解を示すものではない。

  1. *1調査統計局 E-mail : shinichi.nishioka@boj.or.jp
  2. *2調査統計局 E-mail : daisuke.ikeda@boj.or.jp

日本銀行から

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