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「旅行サービス」推計方法を巡る議論と課題

2006年6月
和田麻衣子*1

要旨

 近年、政府等において、外国から我が国への旅行者誘致を強化する政策が進められている。こうした中、国際収支統計の「旅行サービス」のデータは、旅行者の消費額を示す重要な統計であり、その整備を進めるべきとの意見が示されている。
 現行の国際収支統計の「旅行サービス」は、国際収支統計の作成に関する国際的ガイドライン(IMF国際収支マニュアル第5版)に示された定義に沿って作成されている。具体的には、旅行者が使用する支払手段について金額を合計することで推計しているが、「旅行サービス」以外に計上すべき金額の混入の増加や、小額の支出が補足されないといった問題がある。
 こうした、足許の問題に対応して、旅行者に対する消費額等についての調査結果を利用して旅行者の消費額を直接推計していくアプローチに移行することが、データの精度向上に資すると考えられる。
 また現在、IMF国際収支マニュアル第5版の改訂が議論されており、「旅行サービス」や「旅行者」の定義・範囲も見直しの対象となっている。見直しの内容によっては、現行の基礎データ収集方法では対応できない可能性もある。その場合、中長期的な課題として、基礎データの拡充や推計方法の改善を更に進める必要がある。

本稿で行った推定作業については、有田帝馬氏(国際金融情報センター)、大花美鈴氏(日本銀行国際局)の助力を得た。記して感謝したい。また、日本銀行国際局および調査統計局の関係者からの有益な助言に感謝したい。ただし、本稿で述べられている見解は筆者個人に帰するものであり、日本銀行あるいは日本銀行国際局または調査統計局の公式見解を示すものではない。

  1. *1国際局国際収支統計担当 E-mail: maiko.wada@boj.or.jp

日本銀行から

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