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フローデータによるわが国労働市場の分析

2006年10月
桜 健一*1

要旨

 本稿では、わが国では使用例の少ない「労働力調査」のフローデータを用い、失業率や労働力率の変動の背後にあるフロー・メカニズムを、特にマクロの景気循環との関係に着目して分析した。就業・失業・非労働力の3つの労働力状態間のフローの変動について、寄与度分解や構造VARを用いた分析から、以下のことが明らかとなった。まず、失業率の変動には、失業者が就業する確率よりも、就業者が失業する確率の変動によって生じるフローの変動がより大きな寄与を持つ。また、就業と非労働力、失業と非労働力、各状態相互間のフローの変動によって、労働力率が順循環的に変動しており、この傾向は特に女性で強い。この結果は、求職意欲喪失効果のインパクトが追加労働者効果よりも大きいことを示唆する。

本稿の作成にあたっては、太田聰一教授(慶應義塾大学)から貴重なコメントを頂いた。また、佐々木仁氏(日本銀行国際局)、肥後雅博氏(同調査統計局)、中村康治氏(同)には多大なアドバイスを頂いた。加えて、日本銀行内の多くのスタッフから有益なコメントを頂いた。データの整備作業に際しては、荒井千恵氏(日本銀行調査統計局)、孝壽綾子氏(同)、山岡理恵氏(同)の多大なご支援を頂いた。記して感謝の意を表したい。ただし、本稿に示されている意見は日本銀行あるいは調査統計局の公式見解を示すものではない。また、ありうべき誤りはすべて筆者個人に属する。

  1. *1日本銀行総務人事局(カリフォルニア大学ロサンゼルス校留学中)
    Email: ksakura@ucla.edu

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