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日本におけるクレジット・スプレッドの変動要因

2007年1月
大山慎介*1
杉本卓哉*2

要旨

 本稿では、日本における社債の流通利回りの対国債スプレッド(以下、クレジット・スプレッド)が、無リスク資産の金利や企業のファンダメンタルズ指標などとどのような関係を持つかを実証的に分析した。その結果、金利が上昇すると、あるいは、企業の資産価値の代理とした財務ファンダメンタルズに関する指標が改善すると、日本のクレジット・スプレッドが統計的に有意に縮小することが明らかになった。これらは、米欧のクレジット・スプレッドに関する学術研究において広く用いられる構造型モデルの含意と整合的な結果である。また、米欧の先行研究と同様、日本のクレジット・スプレッドは、格付が低いほど、金利や企業の資産価値の変動により大きく反応することが分かった。さらに、金利のインプライド・ボラティリティはクレジット・スプレッドに対して統計的に有意な正の関係を持ち、金利の先行き不透明感の高まりはスプレッドの拡大につながることを確認した。

本稿の作成に当たって、多くの市場参加者の方々、日本銀行のスタッフから有益なコメントを頂戴した。特に、大橋英敏氏(モルガン・スタンレー証券)、香月康伸氏(みずほ証券)、後藤文人氏(UBS証券)、高橋公英氏(野村證券)、安田秩敏氏(JPモルガン証券)のほか、日本銀行の上野陽一氏、小田信之氏、河合祐子氏、河野圭志氏、長野哲平氏、久田祥史氏から、暫定稿に対する建設的なコメントを頂戴した。この場を借りて深く感謝の意を表したい。文中に有り得る誤りは、すべて筆者の責任である。また、本稿における意見などはすべて筆者の個人的な見解であり、日本銀行および金融市場局の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行金融市場局 E-mail: shinsuke.ooyama@boj.or.jp
  2. *2日本銀行金融市場局 E-mail: takuya.sugimoto@boj.or.jp

日本銀行から

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