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資源配分の歪みと銀行貸出の関係について:

銀行の金融仲介機能の低下とその影響

2007年2月
大谷 聡*1
白塚重典*2
山田 健*3

要旨

 本稿は、1990年代以降における経済の長期低迷と金融システム不安、その後の景気回復と金融システムの安定化に焦点を当て、実物面での資源配分の歪みと金融面での歪みの間における相互作用を実証的に分析する。本稿では、実物面の資源配分の歪みの指標として、産業間での要素価格の乖離度合いを用いる。また、金融面での資源配分の歪みの指標については、ベンチマークとして、平均・分散アプローチに基づきリスク対比でみたリターンを最大化させる貸出ポートフォリオを考え、これと実際の貸出ポートフォリオとの乖離度合いを計測する。本稿の分析からは、実物面での資源配分の歪みと貸出ポートフォリオの歪みは、ともに1990年代後半にかけて大きく悪化し、2000年代入り後改善傾向にあることが示される。さらに、個別銀行データ、産業別データを使ってパネルデータ分析を行った結果、実物面での歪みと貸出ポートフォリオの歪みの間には、1990年代後半にかけては負の相互作用が生じていたが、1990年代末以降は、貸出ポートフォリオの歪みが改善に転じ、それが実物面の歪みを改善させるという正の相互作用が生み出されたと考えられる。

キーワード:
資源配分の効率性、実物面と金融面の相互作用、平均・分散アプローチ

本稿の作成に当たっては、池尾和人(慶應義塾大学)、翁邦雄(中央大学)、白川方明(京都大学)の各氏ほか、金融機構局、企画局、調査統計局、金融研究所スタッフから有益なコメントを頂いた。また、片桐満、須田侑子、鶴井亮子の各氏から計数作成等多大なサポートを頂いた。ここに記して感謝したい。ただし、本稿で示されている意見およびあり得べき誤りはすべて筆者らに属し、日本銀行あるいは金融機構局の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行金融機構局経営分析担当 e-mail: akira.ootani@boj.or.jp
  2. *2日本銀行金融機構局経営分析担当 e-mail: shigenori.shiratsuka@boj.or.jp
  3. *3日本銀行金融機構局経営分析担当 e-mail: takeshi.yamada@boj.or.jp

日本銀行から

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