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企業家精神と設備投資:

デフレ下の設備投資低迷のもう一つの説明

2007年3月
福田慎一*1
粕谷宗久*2
慶田昌之*3

要旨

 本稿では、デフレ下の日本経済において上場企業の設備投資が低迷した要因を、企業の財務データに加えて経営者の属性情報を使って投資関数を推計することによって考察した。各上場企業の投資関数を推計した場合、トービンのqやキャッシュ・フローといった標準的な財務変数に加えて、社長のキャリアや年齢、オーナー社長であるかどうかなど経営者の属性や利益処分に占める役員賞与の比率が、各上場企業の設備投資に対して有意な影響を及ぼすことが明らかになった。一般に、中小企業と比べて、上場企業は多様な資金調達手段が存在し、金融危機下でも設備投資に対する資金制約は相対的に緩やかであったはずである。本稿の結果は、バブル崩壊後の経営者の設備投資に対するスタンスの変化が、企業の直面するファンダメンタルズの悪化に加えて、デフレ下の日本経済における上場企業の設備投資を減少させた可能性を示唆するものである。

本稿の作成にあたっては、早川英男局長をはじめとする日本銀行調査統計局のスタッフの方々から有益なコメントをいただいた。また、データ整理に際しては、稲田武夫君と岡畑信秀君に大変ご助力いただいた。なお、本稿で述べられた意見、見解は、筆者個人のものであり、日本銀行あるいは調査統計局のものではない。

  1. *1東京大学; e-mail:sfukuda@e.u-tokyo.ac.jp
  2. *2日本銀行調査統計局; e-mail:munehisa.kasuya@boj.or.jp
  3. *3東京大学

日本銀行から

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