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通貨スワップと為替スワップの裁定関係と価格発見力

2007年11月
天達泰章*1
馬場直彦*2

要旨

 本稿では、日本円と米ドルを1年以上の長いタームで一定期間交換する取引である通貨スワップ(スタート時とエンド時に元本を、期中とエンド時に変動金利を交換するベーシス・スワップ)が、為替スワップと無裁定関係にあることを理論的かつ実証的に示すとともに、誘導型アプローチ、構造型アプローチ双方を用いて、両スワップ市場間で価格発見力を比較している。具体的には、まず、邦銀・外銀間のリスク・プレミアムの相違を考慮することによって、両スワップ価格が裁定関係にあることを理論的に示し、長期カバー付金利平価説を再考する。次に、エラー・コレクション・モデルに基づく誘導型アプローチと状態空間モデルに基づく構造型アプローチを用いて、価格発見力を両スワップ価格間で比較している。主な分析の結果を要約すると以下のとおり。(1)二つのスワップ価格は、密接な裁定関係にある。(2)為替スワップ市場よりも通貨スワップ市場の方が相対的に高い価格発見力を有する。誘導型アプローチ、構造型アプローチの双方の分析において、同様の結果を得た。

キーワード:
通貨スワップ、ベーシス・スワップ、為替スワップ、価格発見力、エラー・コレクション・モデル、状態空間モデル、効率価格

本稿の作成に当たっては、松林洋一教授(神戸大学)、白石明士氏(メイタン・トラディション)、高見和行氏(三菱東京UFJ銀行)、河野圭志氏(日本銀行)、長野哲平氏(同)から有益なコメントを頂いた。ここに記して感謝したい。ただし、本稿で示されている意見およびあり得べき誤りはすべて筆者らに属し、日本銀行あるいは金融市場局の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行金融市場局(現総務人事局)
  2. *2日本銀行金融市場局 E-mail: naohiko.baba@boj.or.jp

日本銀行から

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