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日本のフィリップス曲線に何が起こったか

企業の価格設定行動の変化と名目硬直性の高まり

2008年1月
木村 武*1
黒住卓司*2
原 尚子*3

要約

 日本の1990年代後半以降のインフレ率と実体経済の関係について振り返ってみると、(1)1997年末以降、景気の悪化にもかかわらず、デフレは加速せず、インフレ率が小幅のマイナス領域に止まった、(2)また、2002年以降、景気の長期回復にもかかわらず、インフレ率は目立って高まっていない、という特徴がうかがわれる。本稿は、これを、フィリップス曲線のフラット化という観点から捉え考察を行った。フラット化の原因については、既往理論をもとに、インフレ率の傾向的低下に伴う価格改定頻度の低下や、競争激化を背景とした需要の価格弾性値の上昇など幾つかの仮説が考えられるが、これらの要因だけで、計測されたフィリップス曲線の特性を十分に説明することは難しい。我々は、「経済のグローバル化や規制緩和などを背景に、財市場の競争構造や労働市場において、一方向の調整圧力が持続的に発生すると、企業は個々の需給動向よりも、世間相場を重視した価格設定を行うようになる」ことを理論モデルで示す。そして、そうした企業の価格戦略が名目硬直性を高め、フィリップス曲線のフラット化をもたらすことを指摘する。

キーワード:
フィリップス曲線のフラット化、名目硬直性

本稿は、東京大学金融教育研究センター・日本銀行調査統計局による第二回共催コンファレンス「90年代の長期低迷は我々に何をもたらしたか」(2007年11月)の報告論文である。
論文作成に当たっては、一上響、加藤涼、川本卓司、塩路悦朗、代田豊一郎、新谷元嗣、関根敏隆、中村康治、西村清彦、福田慎一、福永一郎、廣瀬康生、前田栄治、門間一夫の各氏から有益なコメントを頂いた。ただし、本稿に示されている意見は日本銀行の公式見解を示すものではない。また、ありうべき誤りは、全て筆者たち個人に属する。

  1. *1日本銀行金融市場局 E-mail: takeshi.kimura@boj.or.jp
  2. *2日本銀行調査統計局 E-mail: takushi.kurozumi@boj.or.jp
  3. *3日本銀行調査統計局 E-mail: naoko.hara@boj.or.jp

日本銀行から

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