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家計の物価見通しの下方硬直性:『生活意識に関するアンケート調査』を用いた分析

2008年3月
鎌田康一郎*

要旨

本稿では、賃金の下方硬直性に関するカーン検定を『生活意識に関するアンケート調査』の個別回答に応用し、家計のインフレ期待の性質について分析した。分析の結果、家計の物価見通しの回答には、下方硬直性があることが分かった。この場合、家計の真のインフレ期待とアンケート調査における回答が、非線形な関係になる。つまり、家計のインフレ期待の高まりは、高インフレ期には、一対一でアンケート調査に表れるが、低インフレ期には、部分的にしか表れない。また、下方硬直性によって、インフレ期待と他の経済変数との間に本来あるはずの相関が検出されなかったり、逆に、見せかけの相関が検出されたりする可能性が高まる。こうした点を踏まえ、本稿では、インフレ期待の回答から下方硬直性を除去した上で、家計の景気見通しや中央銀行に対する見方との関係を調べた。分析の結果、2005年末以降、家計の景気見通しとインフレ期待は逆相関していることが分かった。また、2006年を境に、家計が中央銀行の活動に関心を持つほど、インフレ期待が安定化し、中央銀行に対する信頼が厚くなるほど、インフレ期待の上昇が抑制されるという関係が観察されるようになった。

本稿の作成に当って、日本銀行のスタッフから有益なコメントを頂いた。この場を借りて、深く感謝の意を表したい。もちろん、あり得べき誤りは筆者に属する。なお、本論文の内容や意見は、筆者個人に属するものであり、日本銀行および企画局の公式見解を示すものではない。

  • 日本銀行企画局 E-mail : kouichirou.kamada@boj.or.jp

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