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インフレーション・ターゲティングの変貌:

ニュージーランド、カナダ、英国、スウェーデンの経験

2008年10月
上田晃三*

要旨

 本稿では、この約20年に亘る、ニュージーランド、カナダ、英国、スウェーデンの4ヶ国におけるインフレーション・ターゲティング(以下IT)の変貌とその背景に関する事例の整理を実施した。分析を通じて分かったことは以下の3点である。1つめは、これら4ヶ国の中銀は、IT導入当初、インフレ期待の安定を重視する観点から、足許の物価安定に向けて厳格な運営を試みたが、その後徐々に中期的な物価と実体経済の安定をめざす運営に変貌していったということである。2つめは、この変貌の背景には、経済に発生したショックの内容・大きさだけでなく、各国における政治的背景や、ITの枠組みに対する信認の強さもあったということである。3つめは、過去20年間に金融政策の透明性が大幅に向上・強化され、これが4中銀の政策運営に対する批判への防御となり、ITの枠組みに対する信認を確立・維持する助けとなっていたということである。

本稿の作成に当って、日本銀行のスタッフから有益なコメントを頂いた。この場を借りて、深く感謝の意を表したい。もちろん、あり得べき誤りは筆者に属する。本論文の内容や意見は、筆者個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。なお、上田(日銀レビュー・シリーズ08-J-11) は本稿を要約したものである。

  • 日本銀行企画局(現金融研究所)

日本銀行から

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