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「労働力調査」の標本誤差と非標本誤差

— 家族従業者の短期の変動(振れ)やバイアスに関する考察を中心に —

2009年5月
塩谷匡介*1
肥後雅博*2

要旨

 「労働力調査」は雇用動向を把握する上で不可欠の統計であり、統計に含まれる短期の変動(振れ)の性格を理解することによって、その有用性は一層高まると考えられる。各計数のうち、雇用者や非労働力人口については変動の振幅は比較的小さいが、自営業主、家族従業者、完全失業者の変動の振幅は大きい。

 標本誤差ならびに非標本誤差が、こうした短期の変動に対して、どの程度の影響を持っているのか、一定の前提の下で試算を行った。まず、標本誤差がもたらす影響は、標本理論で一般に示されているとおり、母数の値が大きい雇用者や非労働力人口では比較的小さいが、母数の値が小さい自営業主、家族従業者、完全失業者では相対的に大きい。標本誤差による短期変動は、雇用者、非労働力人口、自営業主では実データの短期変動のほとんどを、家族従業者と完全失業者ではその6割程度を占め、短期の変動は主として標本誤差から生じていることが分かる。

 次に非標本誤差をみると、家族従業者では、回答者が調査票の記入要領を十分に参照しないため、本来雇用者に計上されるべき「有給の自家営業の手伝い」が計数に混在しており、その一部は調査票の記入要領の変更で解消されたが、まだ一定のバイアス(計数の恒常的な偏り)が生じている。もっとも他の計数では、不在によって回答が得られない世帯、調査には回答するが就業状態や従業上の地位を回答しない世帯、各々によるバイアスがみられるが、その値は大きくない。非標本誤差の短期変動に対する影響も、家族従業者を除き、多くの計数で小さな値にとどまる。

本稿の作成に際しては、西郷浩教授(早稲田大学)、黒田祥子准教授(東京大学)ならびに西村清彦副総裁、一上響氏、北村冨行氏、福永一郎氏、前田栄治氏、門間一夫氏ら日本銀行スタッフから有益なコメントを頂いた。総務省統計局労働力人口統計室からは労働力調査に関する資料等を提供頂いた。記して感謝の意を表したい。ただしあり得べき誤りは筆者らに属する。本稿の内容・意見は筆者個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。

  1. *1調査統計局企業調査担当 E-mail: kyousuke.shiotani@boj.or.jp
  2. *2調査統計局物価統計担当 E-mail: masahiro.higo@boj.or.jp

日本銀行から

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