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ハイブリッド型日本経済モデル:

Quarterly-Japanese Economic Model (Q-JEM)

2009年7月
一上響*1
北村冨行*2
小島早都子*3
代田豊一郎*4
中村康治*5
原尚子*6

要旨

 本稿は、日本銀行のスタッフが開発したマクロ経済モデルの一つである「Q-JEM」の2009年5月時点版の解説論文である。Q-JEMは、海外経済、原油価格、金融変数、人口動態といった日本経済を分析するうえで重要な多くの変数を持つ大規模モデルである。また、経済理論との整合性を考慮した長期均衡を持ちつつ、データとの整合性も重視したハイブリッド型モデルである。長期均衡では、日本のデータや投資特殊的技術などの理論と整合的に、デフレーターの相対価格がトレンドを持つことを許容したうえで、GDPコンポーネントの名目ベースの対GDP比率が定常となるような制約を掛けることを基本としている。加えて、金融政策ルールと民間期待を明示的に取り込むことで、政策ルールの変更が、将来の金融政策に対する期待を通じて長期金利などを変動させ、足元の経済に影響を及ぼす構造となっている。本稿では、こうした特徴を解説したうえで、インパルス応答の結果を確認し、ゼロ金利制約の影響についても考察する。また、データや定式化の詳細を、補論として取りまとめる。

Q-JEMの開発では、その初期段階を中心に、伊藤智、黒住卓司、砂川武貴も貢献した。また、本稿の執筆作業では、荒井千恵、上野陽一、米山俊一の協力を得た。稲葉圭一郎、開発壮平、黒住卓司、須合智広、関根敏隆、中村慎也、笛木琢治、福永一郎、藤木裕、前田栄治、門間一夫をはじめ日本銀行の各氏のほか、カナダ中銀でのセミナー参加者からは、有益なコメントを頂いた。FRBのJohn Roberts氏には、2007年夏の日本銀行金融研究所での長期滞在中、Q-JEM開発への助言のほか、FRBのマクロ経済モデルFRB/USに関する資料提供など、多くの面で協力して頂いた。記して感謝の意を表したい。ただし、ありうべき誤りは筆者らに属する。また、本稿の内容・意見は筆者ら個人に属するものであり、日本銀行および調査統計局の公式見解を示すものではない。

  1. *1調査統計局 E-mail: hibiki.ichiue@boj.or.jp
  2. *2調査統計局 E-mail: tomiyuki.kitamura@boj.or.jp
  3. *3調査統計局
  4. *4調査統計局 E-mail: toyoichirou.shirota@boj.or.jp
  5. *5企画局<元調査統計局> E-mail: kouji.nakamura@boj.or.jp
  6. *6調査統計局 E-mail: naoko.hara@boj.or.jp

日本銀行から

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