このページの本文へ移動

動学的一般均衡モデルに基づく潜在金利の推定方法について― パーティクル・フィルターの応用 ―

2010年9月
北村冨行*1

全文掲載は、英語のみとなっております。

要旨

本稿は、ゼロ金利下の金融政策の緩和度合いを動学的一般均衡モデルに基づいて計測するための、実証分析フレームワークを提示する。このフレームワークで用いる動学的一般均衡モデルは仮説的(hypothetical)なものであり、名目金利が、例えば中央銀行・政府による通貨への課税のために、ゼロ以下になり得ることが仮定される。本稿では、同モデルにおける名目金利を「潜在金利」と呼ぶ。潜在金利は、その値が正の場合には、中央銀行が操作目標とする実際の名目金利と一致し、直接観察される。一方、潜在金利が負の値をとる場合には、実際の名目金利はゼロにとどまるため、両者は乖離し、潜在金利は直接観察されない。潜在金利が負の値をとって実際の名目金利と乖離した場合、モデル内で経済活動に影響を及ぼす金利は、実際に観察される名目金利ではなく潜在金利の方である。この仮説的な動学的一般均衡モデルは、パーティクル・フィルターを応用することによってデータに当てはめることができ、同時に潜在金利の推移を推定することもできる。本稿では、例として、小型ニュー・ケインジアン・モデルを日本のデータに当てはめる。推定結果からは、2000年代前半に名目金利がゼロであった間、潜在金利はゼロを相当程度下回る水準まで低下していたことが示唆される。

  1. *1日本銀行調査統計局 E-mail : tomiyuki.kitamura@boj.or.jp

日本銀行から

日本銀行ワーキングペーパーシリーズは、日本銀行員および外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行の公式見解を示すものではありません。
なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関するお問い合わせは、執筆者までお寄せ下さい。
商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行情報サービス局までご相談下さい。転載・複製を行う場合は、出所を明記して下さい。