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サービス価格をどのように測るべきか―企業向けサービス価格指数の実例を踏まえて―

2010年3月
西岡慎一 *1
亀卦川緋菜 *2
肥後雅博 *3

要旨

本稿は、日本銀行「企業向けサービス価格指数(CSPI)」を例に、統計実務に携わる者の観点から、統計作成に対する取り組みとその限界について論じる。CSPIが現在直面している課題として、以下の4点が挙げられる。(i)商業サービスをCSPIの調査対象としていないなど、カバレッジが十分に広いとはいえない。商業サービス価格指数の不在によって、GDP統計に一定の計測誤差をもたらしている可能性がある。(ii)サービス生産統計の整備が十分には進んでいないことから、CSPIの基準改定の時期が他の価格統計に比べて遅いほか、品目内のサービス構成が実勢と乖離している品目が存在する。これによって価格指数に計測誤差が生じている。(iii)携帯電話料金や航空運賃など多様な料金プランが設定されるサービスが増加しているが、こうしたサービスでは、情報の不足などから、必ずしも十分な価格調査が実現できていない。(iv)サービスは財以上に品質の特定や定量化が難しいため、品質調整を十分に実施できないものや、品質一定の価格調査が難しいものが多い。日本銀行は、長年にわたって、CSPIが抱えてきた多くの問題に対し、できる限りの取り組みを行ってきたが、それでもなお上記の課題が残存している。

キーワード
企業向けサービス価格指数、価格差別、品質調整、モデル価格

本稿は、東京大学金融教育研究センター・日本銀行調査統計局第3回共催コンファレンス「2000年代のわが国生産性動向—計測・背景・含意—」(2009年11月26日、27日)・第3セッション報告論文である。本稿の作成にあたり、指定討論者の中島隆信教授(慶應義塾大学)をはじめとする同コンファレンス参加者の方々、日本銀行スタッフから数多くの有益なコメントを頂いた。また、データの作成に際しては、萩原佐和子氏(日本銀行調査統計局)のご支援を頂いた。この場を借りて、深く感謝の意を表したい。もちろん、有り得べき誤りは全て筆者に属する。本稿に記された意見・見解は筆者個人のものであり、日本銀行及び調査統計局の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行金融機構局(前調査統計局) E-mail : shinichi.nishioka@boj.or.jp
  2. *2日本銀行調査統計局 E-mail : hina.kikegawa@boj.or.jp
  3. *3日本銀行調査統計局 E-mail : masahiro.higo@boj.or.jp

日本銀行から

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