Contingent Capitalに関する一考察
2010年8月
鎌田 康一郎 *1
要旨
Contingent Capital(CC)は、自己資本が毀損された場合に、自動的に自己資本に転換される債券である。本稿は、CCの発行金利の決定要因について分析するとともに、CCの発行が他の金融市場に及ぼす影響について議論する。分析結果によると、わが国の場合は、経済環境や金融機関のバランスシート構成を反映して、CCの金利が高水準になる可能性が高い。しかし、様々な工夫を凝らすことによって、金利水準を引き下げることは可能である。したがって、多くの銀行にCCの発行を促し、そのメリットを最大限に引き出すためには、CCの商品性を規制によって過度に限定することは望ましくない。ただし、CCは、商品性や発行条件によって、市場を不安定化する可能性があることには注意が必要である。また、CCの発行量を増やしても、銀行の破綻確率が小さくなるとは限らない。しかも、CCの最適な発行量は、期待成長率など様々な経済環境の変化に敏感に反応する。CCの導入を検討するには、こうした点にも留意が必要である。
本稿の作成過程で、日本銀行のスタッフから有益なコメントを頂戴した。この場を借りて、深く感謝の意を表したい。もちろん、あり得べき誤りは筆者に属する。なお、本論文の内容や意見は、筆者個人に属するものであり、日本銀行および金融機構局の公式見解を示すものではない。
- *1日本銀行金融機構局 E-mail : kouichirou.kamada@boj.or.jp
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