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金融経済のグローバル化の下での米国金融政策の他国への波及効果に関する実証研究

2013年11月26日
福田善之*1
木村有希*2
須藤直*3
鵜飼博史*4

全文掲載は、英語のみとなっております。

要旨

米国の金融政策は、他国の景気変動に大きな影響を及ぼすと考えられている。本稿では、近年の金融経済のグローバル化の進展によって、米国の金融政策の波及がどのように変化したかについて、1990年1月から2007年12月までのデータを用いて、実証分析を行った。具体的には、FF金利の外生的な変動が、先進国、ラ米諸国、アジア諸国など米国以外の国々の生産活動にどのように影響を及ぼしたかを、1990年代と2000年代に分けて分析した。この結果、1990年代には、米国金融政策の引き締めが多くの国々の国内生産を減少させていたが、2000年代になると、この負の効果が弱まっていることが判明した。負の波及効果が弱まった背景を考察するため、本稿では、DSGEモデルを構築し、金融経済のグローバル化を含む近年の世界経済の構造変化が有する理論的含意を分析したうえで、米国の金融政策の引き締めに対する各国の政策変数、貿易変数、金融変数の反応を推計した。これによると、貿易面でグローバルな統合が深化したにも関わらず、世界経済に占める米国経済の相対的重要性が低下したことや、米国以外の国々で金融政策や為替制度のレジームが変化したことが、波及効果の低下に影響している可能性が示唆された。また、2000年代には、金融面で短期的な波及効果が認められるものの、その持続性は小さく、実体経済への影響も限られていることが示唆された。

キーワード
米国金融政策、波及効果、金融の連関性、貿易の連関性

  1. *1日本銀行国際局 E-mail : yoshiyuki.fukuda@boj.or.jp
  2. *2日本銀行金融機構局 E-mail : yuki.kimura@boj.or.jp
  3. *3日本銀行金融機構局 E-mail : nao.sudou@boj.or.jp
  4. *4日本銀行国際局 E-mail : hiroshi.ugai@boj.or.jp

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