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スキル・プレミアムは上昇しているか?:2部門経済における資本とスキルの補完性の役割と部門間の変化

2014年10月28日
片山宗親*1
加藤涼*2
原尚子*3

全文掲載は、英語のみとなっております。

要旨

スキル・プレミアム(高技能労働者と低技能労働者の賃金格差)の変化には各国間で顕著な違いがあることが、実証研究で報告されている。先行研究では、多くの国で観察されているスキル・プレミアムの上昇は、構造モデルによって再現・説明されてきた一方、わが国を含め、一部の国で生じているスキル・プレミアムの低下の背景は、未だ説明されていない。

本稿では、こうした問題意識に基づき、高技能労働者と低技能労働者を雇用する2部門(製造業と非製造業)からなる一般均衡モデルを構築した。このモデルでは、資本は高技能労働者よりも低技能労働者との代替性が高いという「資本とスキルの補完性(Capital-skill complementarity)」の概念を導入し、「資本とスキルの補完性」が部門間で異なる可能性を考慮している。

わが国を対象に推計したところ、非製造業における「資本とスキルの補完性」の低下(例えば、機械化しにくい低技能労働者の業務が増加すること)が(i)スキル・プレミアムの低下、(ii)製造業と非製造業における賃金の乖離の拡大、(iii)非製造業を中心としたパート比率の上昇、といった近年のファクトをいずれも整合的に説明できる、との結果を得た。非製造業における「資本とスキルの補完性」の低下は、非製造業内の産業構成が変化したことや、低技能労働者を活用する生産技術が変化したことを反映していると解釈される。

  1. *1京都大学 E-mail : katayama@econ.kyoto-u.ac.jp
  2. *2日本銀行調査統計局(現・企画局) E-mail : ryou.katou@boj.or.jp
  3. *3日本銀行調査統計局 E-mail : naoko.hara@boj.or.jp

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