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債券市場における確信の揺らぎと群集行動:中央銀行のコミュニケーション戦略に関する一考察

2014年4月11日
鎌田康一郎*1
三浦弘*2

要旨

本稿では、日本銀行による量的・質的金融緩和政策導入後に観察された長期金利の変動の背景を投資家の確信の揺らぎと群集行動(ハーディング)から説明することを試みる。債券投資家は、金利の先行きに関する確信が揺らぐと、市場価格に追随する傾向が強まる。こうした投資家の行動は、しばしば売りが売りを呼び、買いが買いを呼ぶ群集行動を引き起こし、債券価格を不安定化する。本稿では、投資家の金融環境に関する確信の度合い、市場に流れる情報の有用性あるいは価値、債券市場の流動性といった様々な要因が、債券価格や取引量のボラティリティにどのような影響を及ぼしているのかを、理論モデルを構築し、それを用いた確率的シミュレーションによって明らかにする。さらに本稿では、モデルを実際のデータに当てはめ、2013年入り後の長期金利のボラティリティの変化の背景を探る。分析結果は、日本銀行による政策変更のアナウンスメントをはじめ、市場における情報フローを投資家がどのように解釈し、彼らの確信がどのように変化したかを把握することが、この間の長期金利の動向を理解する上で鍵となることを示唆している。こうした結果は、金融政策運営におけるコミュニケーション戦略の重要性とその実行の難しさの一端を示している。

本稿の作成に当たって、一橋大学の楡井誠准教授から丁寧なご指導を頂いた。また、日本銀行のスタッフから多数の有益なコメントを頂いた。この場を借りて、深く感謝の意を表したい。もちろん、あり得べき誤りは筆者に属する。なお、本論文の内容や意見は、筆者個人に属するものであり、日本銀行および企画局の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行企画局 E-mail : kouichirou.kamada@boj.or.jp
  2. *2日本銀行企画局(現・松江支店) E-mail : kou.miura@boj.or.jp

日本銀行から

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