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企業の海外進出と収益力

2014年9月18日
近藤崇史*1
中浜萌*2
一瀬善孝*3

要旨

本稿では、わが国企業の海外進出の積極化が収益力や企業価値に与える影響について、実証的に分析した。具体的には、上場企業のマイクロデータを用いて、海外進出の程度を収益率や企業価値に回帰したパネル推計や、国内・海外部門の補完性(一方の事業がもう一方の事業の収益性を向上させる効果)を明示的に考慮した利潤関数の推計を行った。分析の結果、企業が海外進出の程度を高めることは連結ベースの収益力や企業価値にプラスの効果を与えており、さらに、その効果は近年高まっていることが確認された。このことは「収益力や企業価値の高い企業ほど海外進出を行う」という逆の因果関係に起因するバイアスを取り除いた上でも見てとれた。また、企業の海外事業と国内事業の間には補完的な関係があることが示唆された。すなわち、企業は、国内事業を維持しつつ海外事業を拡大させることで、より高い収益性を得ることができる。企業の海外進出による収益力や企業価値へのプラス効果が近年高まっている背景には、海外での経験蓄積、現地需要の取り込み、生産コストの抑制が寄与した可能性がある。

本稿の作成にあたっては、青木浩介氏(東京大学)、日本銀行の多くのスタッフから有益なコメントを頂いた。記して感謝したい。もちろん、あり得べき誤りは全て筆者らに属する。なお、本稿中の意見・解釈にあたる部分は筆者ら個人に属するものであり、日本銀行および調査統計局の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行調査統計局 E-mail : takashi.kondou@boj.or.jp
  2. *2日本銀行調査統計局 E-mail : moe.nakahama@boj.or.jp
  3. *3日本銀行調査統計局 E-mail : yoshitaka.ichise@boj.or.jp

日本銀行から

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