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中央清算機関の財務資源の定量的な評価方法について

2015年3月26日
寺門聡*

要旨

中央清算機関(CCP)とは、清算に参加する金融機関同士の金融取引によって発生する債権債務を引き受け、これを履行する重要な金融市場インフラである。このため、2012年4月に公表された新しい国際基準「金融市場インフラのための原則」では、CCPが清算参加者の破綻に伴って発生する損失を補填するため、CCPの財務資源が一定の要件を満たすことを求めている。もっとも、その設計方針は定量分析に委ねられており、一部の国では現在、こうした分析を進めるための枠組みを整備する動きがみられている。

こうした状況を踏まえ、本稿では、モンテカルロ・シミュレーションの手法を使いながら、CCPの財務資源を定量的に評価する方法の構築を試みた。CCPによって財務資源の設計内容は多岐に亘るが、本稿では、清算参加者の破綻発生後、破綻していない参加者から財務資源を追加的に徴求する手段と位置付けられる「再建ツール」に焦点を当てて分析を行った。具体的には、2014年10月に公表された「金融市場インフラの再建」で示されている「包括性」と「測定可能性」という基準を用いて、再建ツールの評価を行った。

シミュレーションの結果、CCPが清算参加者に対して抱えるエクスポージャーの分散・集中度合いに応じて、CCPが備えるべき財務資源の設計内容も異なることが確認された。これは、財務資源の設計にあたっては、清算対象である市場の構造や、清算参加者のリスク特性等の把握が重要であることを示唆している。

本稿の作成においては、日本銀行のスタッフから有益なコメントを頂戴した。記して感謝の意を表したい。本稿の内容や意見は、筆者個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。また、あり得べき誤りは筆者個人に属する。

  • 日本銀行決済機構局(現・有限責任あずさ監査法人) E-mail : satoshi.terakado@jp.kpmg.com

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